NLPはなぜ生まれたのか?

神経言語プログラミング(以下、NLP)とは、人間の思考や行動を解析し、そのパターンを理解することで、より良いコミュニケーションや個人成長を促進するための心理学的手法です。1970年代に、ジョン・グリンダー(John Grinder)とリチャード・バンドラー(Richard Bandler)によって開発されました。

NLPは、言語学、認知心理学、行動学などの分野から影響を受けています。具体的には、人の思考や行動において、言語(Linguistic)、神経(Neurological)、プログラミング(Programming)の3つの要素が相互作用しているという考え方に基づいています。

NLPでは、言語や身体表現、感情などの要素を分析し、人の思考や行動のパターンを理解することで、コミュニケーションの改善や個人成長を促進することができます。具体的には、自己啓発やコーチング、カウンセリング、営業などの分野で応用されています。ただし、神経言語プログラミングの科学的な根拠は不明瞭であり、批判的な意見も存在します。

NLPが生まれた時代背景

1960年代から1970年代は、アメリカ合衆国において社会的、政治的、文化的な変革が進行していた時期です。この時期には、人々の価値観や社会的な規範が変化し、従来の考え方や行動が問い直されるようになっていました。

例えば、人種差別や性差別に対する闘いが盛んになり、ヒッピー文化が興隆し、反戦運動や環境保護運動が始まりました。また、この時期には、心理学の分野でも人間の行動や思考、感情に対する新しいアプローチが模索されていました。

心理学者のアブラハム・マズローは、「自己実現の人間理論」を提唱し、人間の成長や自己実現について研究しました。また、カール・ロジャーズは、人間性心理学を提唱し、人間の自己啓発や発展について研究しました。

心理療法においても新しいアプローチが模索されていました。フリッツ・パールズのような心理療法家たちは、従来の心理療法に代わる新しい方法を模索していました。

このような背景の中で、リチャード・バンドラーとジョン・グリンダーは、言語と心理学の理論を統合することで、人間の行動や思考、感情に対する新しいアプローチを提供することを目的としたNLPを創始しました。

NLPが効果的だと言われている理由

NLPが効果的だと言われている理由には、以下のような点が挙げられます。

【1】行動や思考のパターンを理解することができる:NLPでは、人間の行動や思考に関するパターンを理解することが重要視されます。これによって、自己理解や他者とのコミュニケーションの改善、自己成長を促すことができます。

【2】コミュニケーションの改善に役立つ:NLPでは、言語や身体表現、感情などの要素を分析することで、相手の思考や感情を理解し、コミュニケーションの改善に役立てることができます。例えば、営業やカウンセリングの分野で、相手のニーズや問題を理解し、適切なアプローチをすることができます。

【3】自己成長に役立つ:NLPでは、自己啓発や自己成長にも役立つことができます。自分自身の行動や思考のパターンを理解し、より良い方向に変えることができます。また、自己啓発の分野では、自分自身の強みを見つけ、それを活かして人生をより豊かにすることができます。

【4】相手の信頼を得ることができる:NLPでは、相手の言葉や行動に敏感に反応することが重要視されます。これによって、相手の信頼を得ることができ、コミュニケーションの円滑化につながります。

以上のような理由から、NLPは、コミュニケーションの改善や自己成長、相手との信頼関係の構築などに効果的な手法として注目されています。ただし、科学的な根拠が不明瞭であり、批判的な意見も存在しますので、注意が必要です。

NLPの有名セラピストたち

NLPの創始者であるリチャード・バンドラー(Richard Bandler)とジョン・グリンダー(John Grinder)に加えて、NLPを用いたセラピーで有名な人物としては、以下のような人物が挙げられます。

  1. トニー・ロビンス(Tony Robbins):アメリカのセルフヘルプ・コーチングのパイオニアであり、NLPを用いたセラピーを展開しています。
  2. ジュリア・キャメロン(Julia Cameron):アメリカの作家で、自己啓発書『アーティストの道』などを著しています。NLPを用いたクリエイティブ・セラピーを提唱しており、多くの人々に影響を与えています。
  3. スティーブン・コヴィー(Stephen Covey):アメリカの著名な経営コンサルタントであり、自己啓発書『7つの習慣』などを著しています。NLPの考え方を取り入れた人間関係やリーダーシップの理論を提唱しています。
  4. パウロ・コエーリョ(Paulo Coelho):ブラジルの作家で、『アルケミスト』などのベストセラー作品を著しています。NLPを用いた心理的なアプローチを作品に反映しており、多くの人々に愛されています。

これらのセラピストたちは、NLPを用いたセラピーにおいて優れた成果を挙げており、多くの人々に影響を与えています。

日本でも最近ではNLPを学ぶ人が多く、有名な人物もいます。

ジャーナリスト、コメンテーターとして活躍する池上彰氏は、NLPの技法を取り入れたコミュニケーションスキルにも精通していることで知られていますし、コミュニケーションコンサルタントとして活躍するマック赤坂氏は、NLPの理論を応用したコミュニケーションのコーチングを行っています。

NLPは誰をモデルにつくられたのですか?

NLPは、創始者のリチャード・バンドラー(Richard Bandler)とジョン・グリンダー(John Grinder)が、当時有名だった3人のセラピストの技術を研究してモデル化することで作られました。彼らが研究した3人のセラピストは、人間関係やコミュニケーションの分野で卓越したスキルを持っていたとされ、以下のように知られています。

  1. フリッツ・パールズ(Fritz Perls):ジェシカ・ラングの夫であるドイツ生まれの精神科医で、ジェシカとともにジェスチャル・セラピーを開発しました。
  2. ヴァージニア・サティル(Virginia Satir):アメリカの家族療法のパイオニアであり、家族のコミュニケーションスキルを改善する手法を提唱しました。
  3. ミルトン・エリクソン(Milton Erickson):アメリカの精神科医であり、催眠療法の先駆者の1人とされています。

バンドラーとグリンダーは、これらのセラピストたちの技術や言動パターンを研究し、彼らが用いる言語や心理学的な技法をモデル化することで、人間の思考や行動に対する理解を深め、NLP理論を構築しました。

フリッツ・パールズ(Fritz Perls)

フリッツ・パールズ(Fritz Perls、1893年7月8日 - 1970年3月14日)はドイツのベルリンで生まれ、アメリカ合衆国のシカゴで亡くなった精神科医で、心理療法家です。彼は、ジェスチャル・セラピーの創始者の一人としても知られています。

パールズは、第一次世界大戦中にドイツ軍に従軍し、後に哲学や心理学を学びました。彼は、催眠療法の経験を持っていたため、自己暗示の利用を含む様々な心理療法を開発しました。1950年代には、パールズは、ヨガや禅、仏教の教え、現代哲学、言語学、芸術などの影響を受け、自身の心理療法を開発していきました。

パールズは、人間が自分自身を理解するために必要なのは、自己体験を通じた自己認識であると考え、ジェスチャル・セラピーを開発しました。ジェスチャル・セラピーは、人々が自分の体験や感情に集中し、自分自身を深く理解することを促す、現在主流の心理療法の一つです。

パールズは、その生涯を通じて、多くの人々に影響を与え、現在でも多くの人々に愛されています。彼の著書には、「ジェスチャル・アプローチ」、「ジェスチャル・セラピー」、「夢と存在感覚」、「エゴ、欲求、自己実現」などがあります。

ヴァージニア・サティル(Virginia Satir)

ヴァージニア・サティル(Virginia Satir、1916年6月26日 - 1988年9月10日)は、アメリカの家族療法の創始者の一人であり、20世紀の優れた心理療法士の一人とされています。彼女は、家族療法の中で、家族や個人の問題を治療するための革新的な手法を開発しました。

彼女は、イリノイ州のニーガンで生まれ、カンザス州立大学で教育を受けました。その後、シカゴで社会事業に従事し、研究を始めました。彼女は、人間関係におけるコミュニケーションの重要性を強調し、カウンセリングやセラピーにおいて、クライアントとの関係性を中心に据えた手法を開発しました。

彼女の最も有名な手法の1つは、セルフ・エスティーム・インハンスメント(自尊心向上)で、自己評価を高めることを目的としています。また、サティルは、家族の構成員がお互いに対してどのように関わり合うかを観察し、家族の中での問題を解決するための手法を開発しました。この手法は、家族システム理論として知られ、家族治療の基盤となっています。

サティルは、世界中で数多くの著作を出版し、家族療法の分野で高い評価を受けています。彼女はまた、アメリカ精神医学会のフェローでもあり、心理療法士としての貢献に対して多数の賞を受賞しています。

彼女は1988年に死去しましたが、彼女の業績と遺産は、今も心理療法や家族療法の分野で広く引用され、その手法やアプローチは、多くの人々によって使われ続けています。

ミルトン・エリクソン(Milton Erickson)

ミルトン・エリクソン(Milton Erickson、1901年12月5日 - 1980年3月25日)は、アメリカの心理療法士で、催眠療法の分野で特に有名でした。彼は、医師としての経験と自身の人生経験に基づき、独自の手法を開発し、その手法は現在でも広く使用されています。

エリクソンは、子供時代にポリオに罹患し、車椅子で生涯を過ごすことになりました。彼は、自分自身を克服し、催眠療法によって自分自身を治療し、その経験をもとに、催眠療法の分野で革新的な手法を開発しました。

彼の手法は、催眠療法における個人的なアプローチとして知られています。彼は、クライアントとの個人的な関係を重視し、クライアントの状況やニーズに応じて、カスタマイズされたアプローチを用いました。また、エリクソンは、クライアントが自己治癒力を引き出すことができるように、言葉や言語に対する感受性を重視しました。

エリクソンは、潜在意識にアプローチすることを重視し、クライアントが自己治癒力を引き出すことができるように、様々な技術を用いました。これには、メタファーの使用、非言語コミュニケーション、また、トランス状態の誘導などが含まれます。エリクソンはまた、催眠療法の分野で、訓練プログラムを開発し、多くの人々を指導しました。

エリクソンは、1980年に亡くなりましたが、彼の手法とアプローチは、現在でも心理療法や催眠療法の分野で、広く引用されています。彼はまた、NLP(神経言語プログラミング)の創始者の一人とされています。